「Beautiful life」

はじめていったニューヨークで、友人とともにいろいろなところを歩いて、郊外でピザを食べた後、ホテルへ戻る道で、ホームレスに見える黒人男性と目が合った。

現実にホームレスなのかはわからないが、身なりからしてそれはわかった。

何メートルも手前から、ずっと視線が合って。正直とても怖いから、何度も目を反らすんだけど、やはりこちらを見てる。

そして近づいた時、彼はずっと僕を見て、同じ言葉を繰り返した。

慣れない英語の響きだから、最初は少しだけ何を言っているのかわからなかったが、徐々に理解出来た。

“Beautiful life”

「ビューティフルライフ、ビューティフルライフ、ビューティフルライフ、ビューティフルライフ・・・・・・」

と、ずっと繰り返していた。

曇り空がところどころ隙をくれて、遠いような青い空を覗かせて、秋の冷たい雨上がりのような、小気味のいい空気。

ニューヨークの空気は嫌いじゃない。

人生の時間は人によって全く異なり、年齢や経験で推し量れるものでもない。ましてや行いや功績でさえも、時にまったく重要性をもっていないのではないだろうかとさえ思うことがある。

もうこの辺で終わりにしてくれないか
 —— と思う程に永く感じる人生がある。

まだまだもっともっと時間が足りない
 —— と焦る程に果敢無く感じる人生がある。

ボロボロの服を纏った、きたない顔。
だからこそ、やけに眼球の白色が際立っていた。

“Beautiful life”

人生とは、花に止まって一瞬、羽を休める蝶の見た夢。
 —— だと言った人がいた。

そうでもいい。

どうでもいい。

たぶん、人生は光の誕生の一瞬の瞬間。

光はその先もずっと遥か、輝いているのに、全容は見えないから、きっと僕らは空を見る。

切り取ったような一瞬。
切り離されたつかの間のひととき。

かけがえのない…

それを人生と僕らは呼んでいる。

20131004 15:05


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