
この川幅がどのくらいあるかなんて
たぶん誰にもわからないよ
霧が晴れるときもあるだろう
濁流がなにかをさらって 岸を削り取ってしまうこともあるだろうよ
希望も記憶も すべて乾いてしまえば
干上がった川底を この足で歩いても渡ることができるかもしれない
しかし向こう岸にたどり着くまでに
なにもない涸れた道を行くのなら
時に孤独な涙の一粒にでさえ 津波のようにのみこまれてしまうことだろうさ
人なんて弱いものだよ
勇敢に流れを横切って その川に飛び込んだ人もいたよ
どんなに前に進もうと腕を回し 波を蹴って 前へ進もうとしていただろう
本人も位置なんてつかめないほどに
たちまち流されていったよ
そのあとはどうなったのかは 僕にはわからないよ
激しい熱はたぶん行き場所なんてどうでもいいのかな
きっと勇敢だったんだよ
たぶんその人の中では
ここでこうしているとさ
人の中にある たぶん誰の中にもある 人の可笑しさに気がつくんだ
船を造る人もいたよ
その辺のものをただ集めて つなぎ合わせて 筏のようなもので行く人もいたし
何年もかけて 立派な船を造った人もいた
できあがった船があまりにも大きくて立派だから
その船は 重くて川まで運べなくてね
その人は結局 川岸でその船に住み込んじゃったんだよ
おかしいでしょ
でもその人は言うんだ
いつか大波が来たときに 俺の船はその時出航するんだって
その人?
あぁ 最近はみかけないね
今ではもう だいぶ旧式の船だよね。
ほら あそこに古い街並みがあるだろ
あの街はそういう出航しない船が集まった街なんだ
みんな最初は この川を渡って 向こう岸へ行こうと思っていた人達なんだ
うん いい街だよ
そうだね 一度だけ 向こう側から来たんだって人に会ったことがあるよ
あの時は…
—— ボーン・・・ボーン・・・ボーン・・・~~~(鐘の音が遠くから響く)
え あれかい
あれは街の時計台の鐘の音だよ
かなり古いものらしいよ
なんでも何百年かに一度 なにか大きな仕掛けがしているらしい
そんな話だけが伝わって残ってるんだよ
その何百年ってのが 本当なのかもわからないし
その一度ってのが いったいいつなのかを知ってる人間なんていないだろうよ
船の街じゃいろいろ研究してる人がいるって聞いてるよ
きみも行ってみな
どうせ向こう岸に行こうったって そう簡単には行けないんだから
まぁ ゆっくりと考えてみるのもいいもんだ
そう なにせあの時計台はとても素晴らしいものなんだ
きみも一度 見ておいた方がいいよ
ただ あそこへは夜に行っちゃいけないよ
かならず太陽の出てるうちに行くんだ
ぼく 僕は ジャスティー
きみはなんて名前なんだい
・・・
そうかい じゃぁ気をつけてなアヴニール
僕はここで橋をつくっているから またここを通るといいよ
20090930 4:37《・・・続く(気が向いたら。。。いつか)》